幕間2

 

 思えば誰からも期待されていなかった。僕自身も自分に期待していなかったと思う。
 僕自身の個性を見たことがあるのは、幼いときに亡くなった母だけだったのだから。
 父も兄も「お前は勉強を頑張りなさい」としか言ってくれない。
 司会者の持つタブレットを、射殺すように見つめたって千里眼なんて使えやしないのだから、僕は頭の中に浮かぶいくつもの問題文を思い返すばかりだった。
  
 僕の目の前の回転灯が赤く回る。僕らのチームに回答権があるのを知らせているのだ。
 両隣からは戸惑いの視線が痛い。ボタンを押す僕の手の甲は二人の手のひらから離れていた。

 

 司会者が問題文を読み上げる声は、静かな会場のどこにも聞こえなかった。